前頭側頭葉変性症の治療

前頭側頭葉変性症の治療では、早期から適切な介護を行い、時には薬の力を借りることで、より良い状態を保つようにします。 前頭側頭葉変性症は、アルツハイマー病などとは異なり、多くの場合、食事や着衣などの基本的な日常生活動作は行うことができるため、 それらについての介護は必要ないといえます。しかし、反社会的な行動などについては対応が必要です。 これらは、介護を工夫することで、うまく対応していくことが重要となります。
薬物療法では、最近、「抗鬱薬」の一種である「SSRI」が効果的であるとが分かり、治療に使われるようになってきました。 また、早期から症状に合わせた適切な介護を行う場合、常同行動をうまく利用することで、介護がうまくいく場合もあります。


■同じことを繰り返すという症状で習慣を作る

前頭側頭葉変性症の介護を行う上で最も重要なのは、 神経細胞が変性し続けていく進行性の病気であることを理解しておくことです。 アルツハイマー病などと同様に、徐々に進行し、それに伴って症状も変化していきます そのため、早期から症状に合わせた適切な介護を行うことが大切です。 常同行動をうまく利用することで、介護がうまくいく場合もあります。 男性の前頭側頭葉変性症のある人では、発症から5〜6年すると、入浴を拒否するようになることがよくあります。 そうなる前の段階から、例えば週に2回はデイサービスで入浴するという習慣をつけておきます。 こうしておくと、何年かたって言葉でのコミュニケーションが難しくなり、自宅での入浴を拒否するようになっても、 決まった曜日のデイサービスでの入浴は本人の常同行動に組み込まれているので、抵抗がないということもあります。
このように、常同行動をうまく利用することで、多くの生活上の困難を解決するのも可能です。

●残された言葉を練習する

意味性認知症の場合は、言葉の症状も進行していきます。初期にはいくつかの言葉の意味が分からなくなるだけですが、 進行して失われる言葉が増えていけば、日常生活に支障をきたすようになります。 失われた言葉は、たとえ学習してもコミュニケーションに利用できるレベルまでには回復しないことがほとんどです。 そこで、残っている言葉の中で、失われると生活に支障をきたしそうな重要な言葉の練習を継続して行います。 そうすることで言葉が失われるスピードが遅くなり、コミュニケーションが取れる期間を延ばすことができます。


■うつ病などで使われるSSRIが有効とされている

前頭側頭葉変性症の薬物療法というと、かつては「抗精神病薬」の鎮静作用で、軽症が現れるのを抑えていました。 ところが最近では、「抗鬱薬」の一種である「SSRI」が効果的であるとが分かり、 治療に使われるようになってきました。SSRIは、脳の神経伝達物質の1つである「セロトニン」 を増やす作用のある薬です。根本的に治すための治療ではありませんが、この治療によって、常同行動の異常などが 改善するとされています。
前頭側頭葉変性症のある人は比較的若いことが多く、現在の段階では、受け入れの態勢が整っていえる施設は あまり多くありません。 そのためにも、早期から適切な介護を行うことで、長く自宅で暮らせるようにすることはとても大切です。