脳血管性認知症の治療

『脳血管性認知症』は、「脳卒中」の危険因子を改善、管理し、脳卒中の再発を防ぐことで、症状の進行を抑え、治療や予防することができます。 症状の改善のためには「ドネペジル」などの薬が使われることもあります。


脳血管性認知症の治療

危険因子を減らしつつ、症状の改善を図る

脳血管性認知症は、脳卒中が再発すると、段階的に症状が進行していきます。 したがって、脳卒中の再発を防ぐことが、認知症の進行を抑えることにつながります。 その意味では、脳血管性認知症は”治療や予防が可能な認知症”といえるのです。 脳血管性認知症の進行を抑えるためには、 「高血圧」 「糖尿病」 「脂質異常症」 などの危険因子をしっかり管理することが大切です。 また、脳梗塞を予防するために、「血栓」ができるのを防ぐ「抗血栓薬」が必要に応じて使われます。 現れている症状については、「中核症状」に対しても、「BPSD」に対しても、 薬による治療が行われることがあります。脳卒中による身体的な障害を伴う場合では、「リハビリテーション」で、 「廃用症候群」を予防することも大切です。廃用症候群とは、長期間安静にしたために、 筋力が低下したり関節が硬直したりして、身体的な機能が衰えることです。


脳卒中の再発予防

高血圧などをきちんと管理したり、血栓の形成を防ぐ

脳卒中の再発を防ぐために、次のようなことが行われます。

危険因子の管理

脳卒中を起こした人は、原因となる危険因子を持っていることが多く、それを放っておくと再発につながります。 再発予防のためには、危険因子をきちんと管理する必要があります。 特に重要なのが高血圧の管理です。食事や運動などの生活習慣の改善を行うのに加え、必要に応じて「降圧薬」を使い、 血圧をコントロールします。高血圧は脳血管性認知症だけでなく、 「アルツハイマー病」にも関係しているとされています。 また、高血圧をきちんと管理することで、認知症の発症リスクを半分以下に減らすことができることも報告されています。 糖尿病と脂質異常症は、動脈硬化を進めて、脳卒中の発症リスクを高めます。 高血圧と同様に、生活習慣の改善を行うことを基本とし、必要に応じて薬を使い、血糖や血中脂質を管理します。
心不全は、脳への血流が低下するため、認知機能の低下の原因となります。 心不全がある場合、特に高齢者では、たとえ血圧が多少高くても血圧の下げすぎに注意し、 脳への血流不足が起こらないように血圧を管理することが重要です。

脳梗塞の予防

脳梗塞が起こる原因となる血栓が形成されるのを防ぐために、抗血栓薬が使われることがあります。 抗血栓薬には、「抗血小板薬」「抗凝固薬」という2つの種類があります。 抗血小板薬とは、血液の凝固に関する「血小板」の働きを抑える薬です。 「ラクナ脳梗塞」「アテローム血栓性脳梗塞」を防ぐために使われます。 抗凝固薬は、血液を固まらせる「凝固因子」の働きを妨げます。 心臓内で血栓ができることによる、「心原性脳梗塞」の予防を目的として使われます。


認知機能障害の症状の治療

アルツハイマー病の薬や脳循環代謝改善薬を使う

認知機能障害に対しては、「ドネペジル(商品名:アリセプト)」が使われることがあります。 ドネペジルはアルツハイマー病の治療薬として知られていますが、脳血管性認知症のある人が使ったところ、 脳血管性認知症にも効果のあることが確かめられています。 ただし、2010年12月現在、ドネペジルは血管性認知症に対しては健康保険が適用されません。 したがって、脳血管性認知症では、アルツハイマー病と合併している場合に限り、ドネペジルが使われることになります。 近い将来、アルツハイマー病の治療薬として「リバスチグミン(商品名:イクセロン、リバスタッチ)」 「ガランタミン(商品名:レミニール)」「ガランタミン(商品名:レミニール)」「メマンチン(商品名:メマリー)」 という薬が承認される見込みです。脳血管性認知症に対しては健康保険が適用されない予定ですが、 これらの薬も、脳血管性認知機能障害に有効だというデータがあります。

脳梗塞の後遺症に対して使われていた「脳循環代謝改善薬」にも、期待が集まっています。 「ニセルゴリン」「アマンタジン」の2種類があり、 脳梗塞の後遺症として起こる意欲や自発性の低下に対する改善効果があります。 これらの薬は、脳血管性認知症の認知機能の改善にも効果があることを示す研究結果が報告されています。 BPSDに対する治療では、「非定型向精神薬」「漢方薬」が使われています。


脳卒中のリハビリテーション

残った機能を最大限に生かすことが重要

脳血管性認知症の人は、脳卒中の後遺症として、「片麻痺」「言語障害」など、 さまざまな障害を持っていることがあります。そのため、生活範囲の制限を少なくするように、 リハビリテーションを行うことが必要になります。
また、日常生活においても、できることは自分で行うようにし、何らかの役割を持ち、 なるべく活動的な生活を送ることが大切です。そのような生活が、障害を改善し、残された能力を維持し、 廃用症候群を防ぐことにつながります。 活動的な生活は、認知機能を維持していくうえでも役に立ちます。 家族が代わりに何でもやってしまい、本人は何もしないようでは、体の機能だけでなく、 認知機能も低下してしまうことが多いのです。 このような認知機能の低下は、脳でも廃用症候群が起きていると考えられるでしょう。