レビー小体型認知症の症状

「幻視」がまず現れることが多く、症状が変動しやすい
認知機能の低下や幻視、パーキンソニズムなどから診断

『レビー小体型認知症の症状』は、診断の根拠としての強さから「必須症状」「中核症状」「示唆症状」「支持症状」などに分類されます。 まず、必須症状である「進行性の認知機能障害」は欠かせません。 これに加えて「認知機能の動揺」「幻視」「パーキンソニズム」という中核症状のうち、2つに当てはまれば 「ほぼ確かなレビー小体型認知症」、1つだけなら「レビー小体型認知症の可能性あり」と診断されます。 示唆症状には「レム睡眠行動障害」「抗精神病薬に対する感受性の亢進」 「機能画像での基底核のドーパミン取り込みの低下」があります。 レビー小体型認知症の可能性がある人に、これらの示唆症状が1つ以上あれば、ほぼ確かなレビー小体型認知症と診断されます。 これらに比べると診断の根拠としては弱いものの、支持症状として「繰り返す転倒」「失神」「自律神経機能異常」 「幻視以外のタイプの幻覚」「系統的な妄想」「うつ状態」などがあげられます。 また、「MMSE」などで認知機能の程度が調べられ、必要に応じてさらに精度の高い検査が行われます。 「画像検査」では、「MRI」「SPECT」「FDG-PET」のほか「MIBG心筋シンチグラフィー」が行われることもあります。


認知症の症状でいうと、もの忘れなどの記憶障害のイメージがありますが、レビー小体型認知症には、次のような特徴があります。


認知機能の低下

認知機能障害のうち、中心となるのがもの忘れなどの「記憶障害」です。 脳には、ものを覚え込む「記銘」、覚えたものを保つ「保持」、覚えたものを思い出す「再生」 という機能があります。アルツハイマー病では記銘機能や保持機能が著しく衰え、経験したこと自体を忘れます。 レビー小体型認知症の場合は、進行すると保持機能も衰えますが、早期では、”覚えているけれど、なかなか出てこない” という再生障害が目立ちます。
そのほかに特徴的な障害として、形や大きさを正しく認識できなくなる「構成障害」「視覚認知障害」 が現れます。そのため、文字や図形を正しく認識できなくなり、文字が下手になったり図形を模写できなくなったりします。 空間における自分の位置を捉えられなくなる「視空間障害」が現れると、トイレの場所を忘れたわけではないのに、 どちらの方向にあるかがわからなくなります。また、椅子に座るとき、自分と椅子の位置関係が捉えられず、 座面の端に腰かけてしまったりします。
「注意障害」も現れます。認知機能があまり落ちていなくても、 注意力が低下するので仕事や日常生活での失敗が増えます。 そのため、早い段階で日常生活に支障をきたすようになります。 また、「認知機能の動揺」も現れます。1日の中で、あるいは日によって認知機能が変動して、 ぼんやりしているときとしっかりしているときの差が生じます。
さらに、日時や自分が今いる場所がわからなくなる「見当識障害」、 正しい判断ができなくなる「判断障害」などがあります。 アルツハイマー同様の症状ですが、レビー小体型認知症の場合、初期から現れるとは限らず、 これらの症状はアルツハイマー病ほど強くありません。


幻視

この病気の特徴的な症状で、人物や小動物が見えます。「部屋の中に人がいる」「ベランダから誰かが室内を覗いている」 「壁に蜘蛛がたくさんいる」など、見えるものはさまざまで、多くは不安や恐怖を伴います。 起こりやすいのは夕方や薄暗い時で、繰り返し何度も現れます。


パーキンソニズム

パーキンソン病に特徴的な「筋肉がこわばる」「動作が遅くなる」「つまづきやすくなる」「小声になる」 「姿勢が前かがみになる」「急ぐと上半身が前に出てしまう」などの症状が現れることがあります。 また、パーキンソン病でよく見られる、「起立性低血圧(立ちくらみ)、尿失禁、便秘」などの 「自律神経症状」が起こる場合もあります。 パーキンソン病での典型的な症状である「安静時の手の震え」は、 レビー小体型認知症ではあまり現れません。認知機能障害が先に現れ、そのあとにパーキンソニズムが現れるのが一般的です。


精神症状、行動異常

意識がはっきりしているときに、実際にはいない人などが見える「幻視」がしばしば現れます。 例えば、「赤い服を着た女の子が座っている」「10人くらいの人がこちらを見ている」など、 現実感があり具体性を帯びているのがレビー小体型認知症の特徴です。 人と話しているうちに、自分にしか見えていないのだと気付くこともあります。
「抑うつ」状態になったり、”物が盗まれた”などと思い込む「被害妄想」、 ”配偶者が浮気している”などと思い込む「嫉妬妄想」などの「妄想」が現れることもあります。
「レム睡眠行動異常」が見られることもあります。 レム睡眠とは夢を見ているときのような浅い睡眠で、夢を見ているときに、大声で叫んだり、暴れたり、 体が勝手に動き家族に暴力を振るったりすることもあります。


レビー小体型認知症のその他の症状

「抗精神薬」が過剰に効きやすくなり、少量でもパーキンソニズムや意識障害を起こすこともあります。 この薬は幻視などに対して使われることもありますが、その際は十分注意して使います。
その他、「被害妄想」「うつ状態」、便秘や起立性低血圧症などの「自律神経機能異常」 などが現れることもあります。
また、症状の変動があり、「昨日は調子が悪かったが今日はよい」など、日によって変動します。 特に、注意力などの認知機能が変動することが多いようです。


アルツハイマー型認知症はもの忘れなどの記憶障害が中心ですが、レビー小体型認知症は多くの場合、 初期には幻視を中心に、行動異常などの症状が強く現れます。 記憶障害はありますが、アルツハイマー型認知症ほど強くありません。 また、症状が変動しやすく、良いときと悪いときで症状が大きく変わります。 良い状態のときには、周囲からは症状があまりわからない場合もあり、 それが発見を遅らせる原因になることがあります。


パーキンソン病の人はレビー小体型認知症になりやすいか?

パーキンソン病もレビー小体型認知症も、脳の神経細胞にレビー小体ができることが特徴的な病気です。 そのため、全員ではありませんが、パーキンソン病患者の中には、レビー小体型認知症になる人もいます。 レビー小体は、溜まる部位によって現れる症状が異なり、脳幹部に溜まるとパーキンソン病が現れ、 大脳皮質などに溜まるとレビー小体型認知症の症状が現れます。 レビー小体型認知症の患者では、大脳皮質だけではなく、脳幹部にもレビー小体が溜まってきて、 後からパーキンソン症状が現れてくる場合もあります。


レビー小体型認知症の脳の変化

大脳皮質などに多数のレビー小体が現れる

レビー小体型認知症では、主に、記憶や感情と関係している「大脳辺縁系」の神経細胞が死滅します。 進行すると、記憶に関わる「海馬」が委縮してきます。 大脳皮質や偏桃体など、大脳の広い範囲に「レビー小体」が出現し、 それが神経細胞の死滅に関わっているとされています。 レビー小体とは、「αシヌクレイン」というたんぱくを主な成分とする物質で、神経細胞内に形成されます。 レビー小体は、大脳から脳幹へと次第に広がっていきます。 一方、パーキンソン病でもレビー小体が見られ、その場合は、まず脳幹に出現します。 のちに大脳に広がり、認知機能が障害されることもあります。

これらは、症状の現れ方で区別されています。すなわち、パーキンソニズムより先に認知機能障害が始まれば、 レビー小体型認知症とされます。逆に、パーキンソニズムから始まり、そのあとに認知機能障害が出現すれば、 「認知症を伴うパーキンソン病」と診断されるのです。 ただし、脳の病変は、レビー小体型認知症も、認知症を伴うパーキンソン病も、パーキンソン病も共通しています。 そのため、これらをまとめて「レビー小体症」として考えることもあります。 レビー小体症型認知症の人の脳に「アミロイドβ」の沈着や「神経現繊維変化」が見られることがあり、 アルツハイマー病との関連があるともいわれています。